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小泉今日子『コラボレーキョン』
- 2011.2.16リリース / VICL-63711 / アルバム / ¥3,150(税込)
アーティストたちをその気にさせる、小泉今日子のコラボ・ヂカラ。
歌手・小泉今日子のニュー・アルバム『コラボレーキョン』が、前作『Nice Middle』から2年ちょっとぶりにリリースされる。
例えば、08年から11年を振り返れば、女優として、映画では大島弓子のエッセイ漫画を映画化した『グーグーだって猫である』から、西原理恵子の自伝漫画を映画化した『毎日かあさん』(2月5日公開)まで、つまり、キャラが超・違う2人の人気漫画家役を演じた。舞台では渡辺えり、村岡希美、蒼井優との4人芝居『楽屋 〜流れ去るものはやがてなつかしき〜』に立ち、宮藤官九郎脚本のTVドラマ『うぬぼれ刑事』の第7話の“悪女”役では佳境で“うぬぼれ”(長瀬智也)とダンス対決をする! などなど、キョンキョンは、一見、ザックリ、音楽活動は置いといて、だったような印象を受けてしまう。
しかし、そんな僕らに「(ゼロ年代だって)ちゃんと歌うときは歌ってたでしょ」とコイズミ姉さんからのツッコミ、いや、うれしい回答が『コレボレーキョン』に収録された全14曲である。2003年から2010年にかけて、小泉今日子、小泉今日子&○○○○、○○○○feat.小泉今日子……と、名義はいろいろなれど、素晴らしい音楽家の人々とコラボレーションしてきた。それでは、収録された楽曲を、大きく4つに分けて、聴いていこう。
まず、贅沢なデュエットものが3曲。
<M4>小泉今日子&細野晴臣「グッド グッド」は、犬童一心監督作『クーグーだって猫である』(08)のエンディングで流れた主題歌だ。本作の主演・小島麻子(小泉)と、その低音の魅力には定評がある音楽監督・細野とのまさかのデュエット。二人とも猫を飼っているせいだろうか? 相性バッチリ! グッド・オールド・ミュージックな装いでありながら、音響的には新しい。なお、ジャケットに描かれているギター弾きの男は、おそらく細野さんがモデルであろう。
<M3>「今日の約束」は、小泉の25枚目のオリジナル・アルバム『Nice Middle』(08)のしめを飾った1曲。作詞・作曲・編曲は、去年、結成20周年を迎えたTOKYO No.1 SOUL SET。小泉がママ役、ラップ/ヴォーカル担当のBIKKEが子供役という会話をフィーチャーした、『毎日かあさん』への出演を予見していたかのような母子ソング。渡辺俊美によるアコースティック・ギターも心地よい。
<M10>浜崎貴司(featuring小泉今日子)「恋サクラビト」は、もはや元FLYING KIDSという枕詞がいらなくなった3枚目のソロ・アルバム『発情』(04)の中の1曲。ジャケットのミラーボールとイメージが重なる、フィリー・ソウル風味が素晴らしい。浜崎のパンチのある歌唱と、小泉の自他共に認める"パンチのない歌唱"の絡みが、逆に官能的だ。
次に、畑正憲監督作『子猫物語』(86)の詩の朗読から数えれば、朗読歴四半世紀以上! そんな小泉がポエトリー・リーディングで参加した楽曲が2曲。
<M9>久保田利伸「Moondust(poetry reading by Kyoko Koizumi)」は、久保田の12枚目のソロ・アルバム『Timeless Fly』(10)のラストに収められた歌。ヴォーカルとラップの絡みは、今や珍しくないが、"KING OF J-SOUL"と小泉の詩の朗読のマリアージュは新鮮な印象をもたらす。
<M11>Nathalie Wise「風越し」は、彼ら(BIKKE、アンダーカレントの斉藤哲也、シンガーソングライター/音楽プロデューサーの高野寛)のサード・アルバム『film,silence』(03)収録曲。高野のヴォーカル&BIKKEのラップ・ミーツ・小泉のポエトリー・リーディングが素晴らしい黄金のトライアングルが楽しめる。BIKKEと小泉のリーディングがダブルになる盛り上がりがスリリングだ。
そして、作詞を本人以外が手がけた楽曲を歌ったものが8曲。
「だんご三兄弟」(99)の作詞・プロデュースで有名な佐藤雅彦が監修するNHK教育『Eテレ2355』のおやすみソングとして流れたのが、<M1>「三日月ストレッチ 背すじのばし編」、<M5>「うちへ帰ろう」、<M14>「三日月ストレッチ 腰ほぐし編」の3曲。いずれも待望の初CD化である。
<M2>小泉今日子「虹が消えるまで」は、小泉の親友・吉田玲雄(作家、写真家、Porter Calssic)がハワイ島での体験を書いたエッセイ集を映画化した『ホノカアボーイ』(09)の主題歌。作詞は脚本の高崎卓馬、作曲・プロデュースは斉藤和義。小泉のしっとり系の歌とウクレレの音(ね)はよく似合う。
<M12>小泉今日子「また逢いましょう」は、小泉の24枚目のオリジナル・アルバム『厚木I.C.』(03)をしめる曽我部恵一の作詞・作曲・編曲による名曲。エキゾチックなサウンドに乗る小泉の歌と、それにより優しく寄り沿う曽我部の歌との距離感が心地よい。
<M6>渡邊忍×小泉今日子「DRAINED CHERRY」は、代官山のガールズ・ブランド<Katie>10周年記念でリリースされたコンピレーション・アルバム『PINK&BLACK』(07)の中の1曲。渡邊はASPARAGUSのギター&ヴォーカルで、木村カエラの「Ring a Ding Dong」などのプロデュースも手がける。『コラボレーキョン』では目立つ、キョンキョン久々のがつんとクるロック・チューン。
<M7>ASA-CHANG&巡礼feat.小泉今日子「背中」は、彼ら――ASA-CHANG(パーカッション、タブラボンゴ)、浦山秀彦(ギター、ミュージック・シーケンサー)、U-zhhan(タブラ)――がオリジナル・アルバムを3枚発表したあと、04年に満を持してリリースしたファースト・シングル。ASA-CHANGの詞はもはや現代詩の世界で、彼女の歌声をアナーキーにエディットをすることによって詩情を溢れさせた問題作(ラジオで流すと放送事故、または、CDの針飛びかと誤解されがち)にして、大傑作である。
<M13>Jazztronik「Click Clock」は、野崎良太a.k.a. Jazztronik10周年アルバム『JTK』(08)に収録されたエレクトロニック・ミュージック/ダンス・ミュージック。『KOIZUMI IN THE HOUSE』(89)、『No17(じゅうななばん)』(90)以降、小泉のヴォーカルとクラブ・ミュージックとの親和性の高さは明らかだったことを思い出す1曲。
さらに、リミックスも1曲。<M8>小泉今日子「Innocent Love(FPM 4/4 DUB MIX)」は、『Nice Middle』の冒頭の1曲、TOKYO No.1 SOUL SETが08年に発表した代表曲のカヴァーを、田中(知之)はんことFPMが『Sound Concierge×Numero TOKYO Utopia-Selected by FANTASTIC PLASTIC MACHINE』のために手がけた。コンピ/リミックス名人が全編和モノにチャレンジした1枚の中でもゴージャズな仕上がりとなっている。M3とM12は彼女のオリジナル・アルバム内の作品だけれど、名うてのアーティストたちについイイ仕事をさせてしまう小泉今日子という、コラボ・ヂカラを持つ希有な存在の課外活動は、『コラボレーキョン』で一気にまとめて聴くことができることとなった。
願わくば、このCDのリリースをきっかけに、小泉今日子の新しいオリジナル・アルバムの制作が始まりますように! それまでは三日月ストレッチでもして、ゆったりと待つことにしよう。 -
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- 01. 三日月ストレッチ 背すじのばし編 / 小泉今日子 「三日月ストレッチ 背すじのばし編」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 02. 虹が消えるまで / 小泉今日子 「虹が消えるまで」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 03. 今日の約束 / 小泉今日子 「今日の約束」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 04. グッド グッド / 小泉今日子&細野晴臣
- 05. うちへ帰ろう / 小泉今日子
- 06. DRAINED CHERRY / 渡邊忍×小泉今日子 「DRAINED CHERRY」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 07. 背中 / ASA-CHANG & 巡礼feat.小泉今日子
- 08. Innocent Love (FPM 4/4 DUB MIX) / 小泉今日子 「Innocent Love (FPM 4/4 DUB MIX)」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 09. Moondust (poetry reading by Kyoko Koizumi) / 久保田利伸
- 10. 恋サクラビト (featuring 小泉今日子) / 浜崎貴司 「恋サクラビト」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 11. 風越し / Nathalie Wise
- 12. また逢いましょう / 小泉今日子 「また逢いましょう」をWindowsMediaPlayerで試聴する
- 13. Click Clock / Jazztronik
- 14. 三日月ストレッチ 腰ほぐし編 / 小泉今日子 「三日月ストレッチ 腰ほぐし編」をWindowsMediaPlayerで試聴する
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小泉今日子の着うた®・着うたフル®はこちら
- http://recochoku.jp/kyon2/